太い針が硬い物に刺さるこの感覚は、今までに経験したことがない痛さだ。



チクッと痛いと思ったら、そこから腕を思いっきり殴られたような痛みが徐々に広がっていく感覚だ。それから、薬の成分のせいか、どこか頭が少しだけボーッとしてきて、ふわふわとした感覚になる。まるで、打ったこともない麻薬を打たれた気分だ。



「だから、痛いって言ったじゃない。」



「『ゴー・トゥー・ヘル』なんて言葉、病院じゃ絶対聞かないと思ってました。」



「よかったじゃない。聞けて。」



なんか今朝は看護婦の当たりが強いような気がする。それに……。



「あの、この点滴のテープの量、いつもより多くないですか?」



「どーせまた昨日みたいに引っこ抜くんでしょ?」



こら! 看護婦!



「はーい、お大事にー!」



看護婦は意気揚々と出て行った。



俺と母さんを二人っきりにして……。



「聡ちゃん! どういうことか、説明してくれるかな?」



「え? えっと、あはは……ああ、薬の副作用で、眠気があぁぁぁ!」



俺は寝たふりを決め込んだ。



「もう! そうやってすぐ逃げる! はあ、それじゃあ母さん、仕事行ってくるから。」



そう言って、俺にデコピンをして、病室を出て行った。