走りながら、不思議な光景があった。



どうやら、俺たちを応援してくれてるのは、伏見さんたちだけじゃなかったみたいで。



小児病棟の前を通れば、「わー、走ってる! お姉ちゃんたち頑張れー!」と応援してくれる。



外科病棟の前を通れば、自分の足とも言える松葉杖を武器に、後ろから走ってくる看護婦をブロックしてくれる。



中には、並走しながら水をくれる人まで現れる始末だ。



まるで、この病棟の入院患者が一体となって、各々の入院生活の鬱憤を俺たちが代表して、晴らしている。そんな気さえ起こさせた。



ハイになってしまったのだろうか。なんだかこの光景が楽しくて、愛くるしくて、いくらでも走れそうな気がした。



「ほら、この階段昇ればゴールだよ!」



そう祭が言い、俺は最後の力を振り絞って、「関係者以外立ち入り禁止」と書かれている柵を越え、屋上へと続く階段を駆け上がった。



「ゴール!」