「さあ、観念なさい!」
そう言って、看護婦がジリジリと間合いを詰めていく。やれやれ。こっ酷く怒られるだろうが、これでもう走らなくて済む。
「果たして、この絶体絶命のピンチを私たちはどう切り抜けるのか!? 次回に続く!」
俺の気持ちとは裏腹に、祭はまだまだ走る気満々のようだ。
もうやめませんかね? 祭さん。
そう言おうとした瞬間、
「とう! ってな。」
と言って、醜いでんぐり返しをする大柄な男たちが現れた。
その中に俺の見覚えのある顔が……伏見さんだ。
「伏見さん!?」
「よお、坊主。なんだか楽しそうなことやってんなー!」
そう言って、伏見さん率いる大柄な男たちが五郎丸ポーズで看護婦の前に立ちはだかった。
「ここは、俺たちに任せてとっとと行け!」
「おー! 救世主現る! 聡くん、ラッキーだね!」
いや、俺にとってはアンラッキーだ。
伏見さんたちは、
「いいか? サモア戦を思い出せー? 世界一のスクラム見せてやれ!」
と看護婦たちに向かって、猛タックルを仕掛けている。違和感この上なし。
「ほら、今のうちに行くよ! 聡くん!」
祭に手を引かれ、看護婦たちの間をぬって再び走り出した。