「痛でっ! ば、馬鹿! 何すんだよ!」
「ほら、これで走りやすくなったでしょ?」
あ、ホントだ……って、違う違う!
「こんなことしちゃまずいだろ! 俺、死ぬぞ?」
「あ、出た正論!」
こ、こいつ……正気か?
……正気らしい。顔色一つ変えることなく、クラウチングスタートの構えに戻っている。
もう、やるしかない。祭の横に立った。
「あれ? 男の子なのに、スタンディングスタートですか? 聡選手!」
そう言って、祭はマイクを向けてくる。
「ほっとけ! 第一、クラウチングスタートというものは、スターティングブロックがあってこそ、本来の目的とする……。」
「はい、よーい、どん!」
俺の説明を聞かずに祭は両手広げて走り出してしまった。
「ちょ! 人の話を最後まで聞けよ!」
遅れること俺も祭の後についていく。