「病院を出るって簡単に言うけど、そこが無理だろ? 私服に着替えて歩いているだけで俺なんかアウトだろ。『点滴台はどうしたの!』って看護師長のババアに怒られちまう。」



「そこは、『外出届が出たのでダイジョウブラジリアン柔術です!』って言い訳して、帰ってバレて怒られるでいいじゃん!」



「仮にそれで通ったとして、受付には看守がいるだろ? あれはどうやって通過するんだよ?」



「いない隙を狙って、万が一鉢合わせても、『お疲れッス!』でダイジョウブルーギルだよ!」



「お、お疲れッスでいけんの!?」



「もしかしてだけど……聡くん、ビビってる?」



こう訊かれると、俺はこう答えるしかなくなる。



「……心外だな。」



すると、祭はそれを了承したという意味に捉える。



「それじゃあ、着替えて準備出来次第、ここに集合ね! はい、散!!」



まったく、こんなアバウトな方法で大丈夫なのだろうか。



看護婦はともかく、看守は不審者が入って来ないようにとか、患者が脱走しないように見張るのが仕事だぞ?



それでお金をもらって家族を養っているはずだ。お金をもらうわけだから、仕事は一切妥協しないだろうし、看守ともあろう人なら尚更真面目な性格に違いない。



社会はそんなに甘くない。