「ねぇ、董子さん?」


俺の言葉に放心状態になってる彼女に声を掛ける。
時計の針は刻々と時を刻んでるから。



「時間、良いの?会社、遅れない?」


そう声を掛ければ、董子さんは慌てて時計に目をやって、近くにあったカバンを引っ掴んで玄関へと走って行った。


と、思ったら、引き返して来た董子さん。
廊下とリビングの間のドアから俺をチラリと覗き見て、


「あんまり、あちこち見ないでね。」


そう、ハニカミながらその一言を言い残し、玄関のドアを閉める瞬間、「いってきますっ!」と、声を掛けて会社へと出て行った。



フッ



ほんとに可愛い人だなぁ。
俺の心は今までにない満足感と至福感に満たされていた。