コーヒーの香りで目が覚めた。
リビングに出れば、董子さんが朝食を食べていた。
ローテーブルに無造作に置かれた新聞に目をやる。


「おはよ。」
「あ、おはよ。私、もう行かなくちゃならないんだけど、簡単に朝食作ってあるから食べて。お昼ご飯はごめんだけど、このお金で何か買って。晩は少し遅くなるけど、良い?」


どうやら、董子さんは本当に俺をヒモにしてくれるらしい。
ダイニングテーブルの上に並べられた美味しそうな朝食。
そして、その横に置かれた2000円。



もちろん手ぶらで出て来た俺に、一銭の手持ちもなかった。
けど、外に何かを買いに出ることは出来ない。


俺の生きる世界から逃避行してしまった俺は、この部屋に軟禁されることになる。
もちろん、それは俺が望んだこと。