「10も上に見えないね。董子さん、可愛いから。」


そう素直な感想を言えば、目の前の董子さんはびっくりしたように目を真ん丸にした。


「可愛い・・・・・?」


可愛いと言う言葉は解せないとでも言うように、董子さんの口からそれは発せられ、その言葉は宙を舞った。


「うん、可愛いよ。」


再度そう言えば、董子さんはフッと笑い、睫毛を伏せた。
何かマズイことを言ったか、俺?
29の女に、可愛いは禁句だったか?


俺が困惑したような顔をしたら、


「ありがと。」


董子さんは、蚊の鳴くような声で呟いた。


その日、俺達はそのまま俺は客間で、董子さんは寝室で眠りに就いた。
きっと明日の朝刊は大騒ぎだろうな、なんて考えながら・・・