目を開けるとそこには見知らぬ天井が広がっていた。
どこだ?ここ。
遠退く意識の端、女の叫び声が聞こえた気がした。



コトリ・・・


何かが置かれる音がした。
音の方を見れば、女がコーヒーカップをテーブルに置いたとこだった。



「目が覚めた?身体冷えてるでしょ?ホットミルク飲める?」


俺に興味がないのか?はたまた、素知らぬ顔をしているだけなのか?
この4年。どこに行ってもキャーキャー騒がれた。
俺に興味のない女だって、生の俺を見れば、その目をハートにして近づいてきた。
なのに目の前のこの女は俺に見向きもしない。


ホットミルクに口を付けながら、部屋を見渡す。




テレビが・・・・・ない。





もしかして、この女、俺のことを知らない?
『新進気鋭、人気俳優。上杉陽斗』を知らない?


何故だか気持ちが高揚した。
芸能人になってからの4年。
俺をただの上杉陽斗として見るヤツは女も男も誰もいなかった。


ただの19歳の上杉陽斗を見て欲しい。
ただの俺を受け入れて欲しい。


名前も知らないこの女に俺は飼われることを決めた。
この世から『俳優、上杉陽斗』消したかった。