「……? 来たよ。来たけど、遠くから見てた」


すると湧人は不思議そうにあたしを見た。


「……遠くから? どうして入って来なかったの?」


「 だって、不法侵入だから。湧人、怒ってたし」


「……っ、それはっ、あの時はっ、……でも名前教えただろ? 名前教えたってことはオレん中じゃもう友達ってこと! 友達ならいいんだよ、入っても!」


「……友達……」


「オレの中じゃそうだから! ……なに⁉︎ なんか文句ある⁉︎」


「……ううん……」


「じゃあ友達! だから自由に入っていいんだよ……」


湧人があたしを見つめる。

濁りのない、まっすぐな銀の瞳……


「……そうなんだ……」


返事をしながら、あたしは思わずその目に引き寄せられた。


「……っ!」

湧人が固まる。


「 目、やっぱりきれいだね 」

あたしが言うと、


「……だからっ! 近いんだってばっ!」

湧人は横を向いてしまう。

 
「 もっと見たいのに 」


あたしが言うと、湧人は“もう!” と言って背中を向けた。


……あれ、怒ったかな。

う~ん? まだESP能力は戻ってはいない。

集中して見てみるけど、湧人からは何の感情も伝わってこなかった。



「……オレさ、前にここ住んでたんだ 」


少しして、湧人がそっと口を開く。

 
「 あ~。聞いた、お婆ちゃんから 」


すると湧人はピクッとなって、


「……そう、」


目の前の、細長い岩に腰かけた。