「……み、く……」


うしろで囁く様な声がした。

振り向くと湧人が呆然と立っている。


「……あ、」


いつからいたんだろう。

もしかして、見てた……?


「……むっ、娘さん……! 」


ぼーっとしてるとお婆ちゃんが手を伸ばし、あたしに向かって拝み始めた。


「……お婆ちゃん?」


「えらいこった〜、えらいこったぁ〜」


「どうしたの?」


「どしたも何もぉ、婆ちゃん分がっちまったぁ〜! こんな事があるなんてぇ〜」


「分かったって、何が?」


「娘さんは……天女さまだべ⁉︎ あの白い羽ごろも! そうに違いねえ!!」


……? てんにょ?  はごろも?


首をかしげながら、あたしはマニュアルの言葉を思い出す。

えっと、能力を見られた時の対処法、対処法、


……あれ、なんだっけ?

すると、


「 もう! 婆ちゃんなに言ってんだよ! それよりケガない? 大丈夫?」


いつの間にか素に戻った湧人が、お婆ちゃんの前にしゃがみこむ。


「 みくは? もう平気? 熱は下がったの?」

「……え、 ……あ、」


あたしがコクンとうなずくと、


「 そう、良かった 」


湧人は少し微笑んだ。



……それから、

湧人は実に淡々としていた。

子供とは思えないテキパキとした口調で、そのあと来た警察の人に事情を話し、男はパトカーに乗せられ連れて行かれた。

お婆ちゃんがあたしを“天女さま” と拝み続ける中、湧人は黙って散らかった部屋を片付けた。