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「何してるの」


あたしは、お婆ちゃんの口を押さえ、羽交い締めにしている男に言った。


「……ぐふうっ、ぐふう……!」


男は挙動不審だ。

あたしの存在を認識しながらもキョロキョロと目を動かし、変な声を漏らしながらタンスの中を引っかき回す。


「 お婆ちゃん放して 」


あたしが一歩近づくと、男はビクッと肩を揺らした。


"ダンッ! ダンッ、ダンッ!"


威嚇するように男は壁を蹴っている。


「……ぐぶう、ぐうっ!」


……変なやつ。

けして、強い男でもない。

でも追い詰められたら何をするか分からないタイプ、か。


「……ンン~!」


お婆ちゃんが“来るな” と手で合図する。 でも、


「離して」


あたしはまた一歩、男に近づいた。


「 ぐふうっ!」

——バリンッ!

男が窓際に置かれた花瓶を割り、その切っ先をあたしに向けている。


……ふうん、じゃあ、

あたしは気付かれないように、棚に飾られていた熊の置物を念動力で動かして——、


——ゴンッ!

男の頭上にそれを落とした。


「……ぐべえっ!!」


苦しそうに男はその場にうずくまる。

その隙にあたしは素早くお婆ちゃんの腕を引っぱった。


「 お婆ちゃん大丈夫⁉︎」


お婆ちゃんは腰が抜けたようになっているが、“大丈夫” と頷いた。

一方、男は狂ったように暴れ出す。


「……うぶぶぶ! グヒィッ!」


口の端から泡を吹き、ジダンダを踏みながら手当たり次第にいろんな物を投げつけてきた。