「 ここオレんちなんだけど! 何でここにいるの⁉︎ 何があったの⁉︎ その顔の傷はなに⁉︎」


……顔の傷?

ああ、もしかしてこれか。

昨日、男に殴らせた時の。


「 あ~。ちょっと、ぶつけた 」


口元に触れながらマニュアルの言葉を口にする。

すると湧人は沈黙し……


「……それ、ぶつけた傷じゃないだろ 」


静かな声でそう言った。


「…………」


あたしはおもわず言葉に詰まる。

別のマニュアルの言葉を思い出そうとするけど、頭がぼーっとして、何も言葉が出てこない。


「 ねえ! 一体何があったの!」


湧人があたしを見つめてる。

その、まっすぐな瞳にあたしはすぐに見入ってしまった。


……あ、


「……湧人の目、銀色……」


なんであの時、気付かなかったのだろう。

日が陰っていたせいか……

今、目の前であたしを見つめる湧人の瞳は、吸い込まれそうなぐらいきれいな銀色をしていた。

まばたきも忘れて、じーっと瞳をのぞき込む。


「……きれい……」

「ちょっ! 近いよっ!」


湧人がふいっと顔をそむけた。

そこでようやく周りの景色が目に映る。

アジサイの花が咲き乱れる手入れの行き届いた緑の庭園。

ゆるやかな坂道の先に構える古い日本風家屋。


……ん?


いつもより外が明るい?


あたしは空を見上げる。


「……あ、」


久しぶりの青空だった。