『転身の秘術』はいつものポーンギルドの地下、質素な石造りの一室で行われることになった。簡素な祭壇とリムストーン、その真ん前に立つように言われて、従った。別段、緊張はしていない。ただ、目の前の香炉と燭台を眺めながら、早く姉さんに会いたいなって考えてた。
 二人の魔女、ユリカとジョリーンさんが、私では分からない言葉を途切らすことなく紡ぎ続ける。その間にも、バーナビーさんとか何人もの戦徒たちが入れ替わり立ち替わり呪い用の品々を設置したり、取り払ったり。そんなことがずっと続いていた。けど、不思議と退屈はしなかった。いや、むしろ途中から何だか心地好くて、ボーッとしてた。そして……うーんと、上手く言えないけど……、なんか、自分の輪郭が消えてしまうような感じ?この世界の一部になってしまうような感じ?後から思うと、本当に怖いことなんだけど、このときはそんなこと全然思わなくて、ただ自分を取り巻く大きな力に身を任せていたんだ──。