ドロシーちゃんからもらった刹那の飛石で領都グランソレンへ飛んだ私は、仏頂面の貴婦人の前で懇願していた。
「ごめんなさい。このとおりだから。許して。ね?ね?」
「あら、そんな頭を下げられても困るザマス。人は忘れていく生き物なんザマしょ?私のことをお忘れになっていたことも、チョコケーキ食べ放題のことも、ちーっとも気にしてないザマス。」
「そんなこと言わないで。忘れてた訳じゃないんだ。結構あれこれ忙しくてさ……。」
「ええ、覚者様はお忙しいザマスものね。私など、優先順位10274番ぐらいですから、全然宜しくてよ。」
「ジョリーンさ~ん(泣)」
「もう、冗談ザマス。そんなにビービー泣かなくてもいいザマスわよ。それに、チョコケーキの代わりに持ってきたクレームブリュレ、なかなかの美味でしたわよ。」
「そ、そう?それはよかった(ドロシーちゃん、お菓子作りも上手なんだよね。女子力高いなぁ。感謝しっぱなしだよ)。
 そ、それで『転身の秘術』って、できるの?」
「『転身の秘術』自体はそれほど難しいものじゃないザマス。けれど、儀式が必要で、私一人ではちと面倒ザマスわね。誰か私の足手纏いにならないような知り合いはいなくて?」
領都で魔法に精通した知り合いなんていたっけ?
 ……あ、いた。私とパンケーキを一緒に食べた後、イケメンの元カレとの確執か何かで、急にいなくなっちゃったあの娘。私の親友で、魔法の実力は折り紙付き。ユリカだったら絶対に間違いない。ただ、どこにいるんだろう?とりあえず、ポーンギルドにでも行ってみようかな。