「……帰ってきませんね、シルヴィアさん。」
朝から泣き出した空を恨めしそうに見上げ、呟くドロシーちゃん。私は、身体中の傷は痛むもののもう立ち歩ける。だけど、雨だし、手持ち無沙汰装で、仕方なく装備品の手入れをしていた。そんな時だったから、ぼんやりと彼女を見ながら、この空は、姉さんの行方が知れず、不安だらけの私の心みたいだって思った。昨日はあんなに晴れていたのにね。
「これで4日目です。こんなに長いことマチルダさんを放っておくだなんて、シルヴィアさんらしくないですよね。」
「うん。姉さんらしくない、かもね。」
でも、何となく分かる気がする。自分にもう少し力があれば、みんなを危険な目に合わせずに済んだのに。そう思うと、私だって居たたまれない。姉さんもきっと同じなんだと思う。
「……ドロシーちゃん、あのさ。」
「はい、何ですか?」
「いつもポーンのみんなって、リムストーンからひょこっと出てくるよね?それを使って、姉さんを探しに行けないの?」
「シルヴィアさんが私たちの故郷『異界の狭間』にいるのなら、見つけるのは難しくないと思います。けど、シルヴィアさんのマチルダさんを思う気持ちは皆が知っています。きっとのんびり休養されてなんかいないでしょう。
それで、私たちはリムを媒介に各地へ飛び回ることはできますが、誰かの足取りを追うのは、このグランシスで誰か個人を追うようなものです。簡単では……って、そうですよね。ご自分で、ということですよね。うーん……。」
ドロシーちゃんの細い眉がハの字に歪む。
「私なら、覚者の私なら、姉さんを探せるんじゃないかと思うんだ。」
「……リムストーンより繋がる異界の狭間、つまり末端を覗く程度であれば可能です、けど……。」
「今、言い淀んだよね。危険なんだ。でも、そんなの関係ないよ。教えてよ、ドロシーちゃん。」
「うーん……。やはり覚者様自身が異界へ行かれるのは危険です。私たちポーンの自我が薄いのは、異界の深淵に囚われないため。ポーン以外が深淵を覗けば、心を永劫に失うことになります。マチルダさんにもしものことがあったら、私はシルヴィアさんに顔向けできません。
……そんな顔しないでください。方法が無いわけではありません。覚者様では危険なのですから、マチルダさんがポーンになればいいんです。」
「へ?私がポーン!?」
「そうです。『転身の秘術』というのがあります。短い時間ですが、覚者様の存在をポーンに換えることができるんです。古の魔術に詳しい方なら、やり方を知っていると思います。」
「詳しそうな人……マッセーラさんは行方不明だしなぁ。ジェシカさんもまだ帰ってこないし、アルスさんは神出鬼没だし、あと、誰がいるかなぁ?」
朝から泣き出した空を恨めしそうに見上げ、呟くドロシーちゃん。私は、身体中の傷は痛むもののもう立ち歩ける。だけど、雨だし、手持ち無沙汰装で、仕方なく装備品の手入れをしていた。そんな時だったから、ぼんやりと彼女を見ながら、この空は、姉さんの行方が知れず、不安だらけの私の心みたいだって思った。昨日はあんなに晴れていたのにね。
「これで4日目です。こんなに長いことマチルダさんを放っておくだなんて、シルヴィアさんらしくないですよね。」
「うん。姉さんらしくない、かもね。」
でも、何となく分かる気がする。自分にもう少し力があれば、みんなを危険な目に合わせずに済んだのに。そう思うと、私だって居たたまれない。姉さんもきっと同じなんだと思う。
「……ドロシーちゃん、あのさ。」
「はい、何ですか?」
「いつもポーンのみんなって、リムストーンからひょこっと出てくるよね?それを使って、姉さんを探しに行けないの?」
「シルヴィアさんが私たちの故郷『異界の狭間』にいるのなら、見つけるのは難しくないと思います。けど、シルヴィアさんのマチルダさんを思う気持ちは皆が知っています。きっとのんびり休養されてなんかいないでしょう。
それで、私たちはリムを媒介に各地へ飛び回ることはできますが、誰かの足取りを追うのは、このグランシスで誰か個人を追うようなものです。簡単では……って、そうですよね。ご自分で、ということですよね。うーん……。」
ドロシーちゃんの細い眉がハの字に歪む。
「私なら、覚者の私なら、姉さんを探せるんじゃないかと思うんだ。」
「……リムストーンより繋がる異界の狭間、つまり末端を覗く程度であれば可能です、けど……。」
「今、言い淀んだよね。危険なんだ。でも、そんなの関係ないよ。教えてよ、ドロシーちゃん。」
「うーん……。やはり覚者様自身が異界へ行かれるのは危険です。私たちポーンの自我が薄いのは、異界の深淵に囚われないため。ポーン以外が深淵を覗けば、心を永劫に失うことになります。マチルダさんにもしものことがあったら、私はシルヴィアさんに顔向けできません。
……そんな顔しないでください。方法が無いわけではありません。覚者様では危険なのですから、マチルダさんがポーンになればいいんです。」
「へ?私がポーン!?」
「そうです。『転身の秘術』というのがあります。短い時間ですが、覚者様の存在をポーンに換えることができるんです。古の魔術に詳しい方なら、やり方を知っていると思います。」
「詳しそうな人……マッセーラさんは行方不明だしなぁ。ジェシカさんもまだ帰ってこないし、アルスさんは神出鬼没だし、あと、誰がいるかなぁ?」