「 麗奈のことだけど、ちゃんと話したから。婚約のことも、会社のことも、すべてお互いが納得いくように話してきた 」
5年もの間、全身にのしかかっていた重圧が取り除かれたかのように
表情が軽くなり、明るくなった千紘を
あたしは思いっきり抱きしめていた。
きっと今の姿が、本来の彼の姿なんだ…
そう思うと胸を締め付けられてるようで
彼の代わりにあたしが泣いていた。
「 なんでお前が泣くんだよ 」
「 千紘がっ…泣かないから……ひっ…」
「 …ほんとに優しいな。ありがとう 」
なんでか、どうしてかなんてわからない…
でも多分、千紘の5年分の涙が今
あたしの目から流れてることは
間違いない。
