沙代さん、ごめんね、ハルのための弁当、オレが食っちゃって。

でも、沙代さんの味付け、すっごい勉強になるし、許して!



志穂が、斎藤の弁当箱を覗いて、声を上げた。



「あれ? もしかして、斎藤くんも自分で作ってきた?」

「あ、うん。そう。よく分かるね」



言われて斎藤の弁当箱を覗くと、確かにいつもと違う雰囲気の中身。



「なんか、ちょっと洋風?」

「オレ、和食は苦手だから」

「てか、……私、和食とか洋食とか以前に、料理そのものが苦手なんですけど」



ため息交じりの志穂の声に、プッと吹き出すと、



「叶太くんの大事な陽菜だって、お料理は得意じゃないよね~?」



と、ハルに振る。



「え? ……う、うん。女の子として、ちょっと恥ずかしいかな」



わたしも勉強しなきゃいけないかな、とオレと斎藤の弁当に視線をやって、ハルが真顔でつぶやいた。



「え!? ハル! オレ、そんなつもりで料理習ったんじゃないから!!」



慌てるオレを見て、志穂は吹き出した。



違うだろ、そこ、吹き出すとこじゃないから!

志穂、お前、ハルの負担を増やすようなこと、言うなよな。

何て言うか悩んでいる間に、志穂はぽんぽんとハルの肩を笑って叩いた。