ほぼ毎日、朝飯も夕飯作りも手伝いながら料理修行をしたオレの料理の腕が上がるのに、時間はかからなかった。



オレが覚えたかったのは、ハルのための料理。

だから、家庭料理が中心。

合わせて、減塩食だったり、病人食だったりを勉強した。



最初の内は、おふくろに教わって作っていたけど、いつしか、自分でレシピを探してきて、一人でも作るようになっていた。



5月の終わりの遠足で、初めて、ハルに料理の腕前を披露。

浮かれて、つい「花婿修行」なんて言ってしまって、クラスの連中に大笑いされた。

その後、男の料理の大流行に合わせて、堂々と弁当を持参するようになった。



「ハル~、今日も弁当作って来ちゃった。味見して~」



大きな弁当箱に、たっぷりのおかず。

もちろん、しっかり出汁を効かせて、薄味基調の上品な味付けだ。



「叶太くん、腕上がったよね。だし巻き卵、美味しそう~」



志穂がオレの弁当箱を覗き込んで、ほうっと息を吐く。

今日のだし巻きには、小口切りにした浅葱が入っていて、彩りも上々だ。



「ホント、すごいよね。どんどん、上手になるんだもん」



ハルの賞賛に気をよくして、オレはハル用の取り皿に、せっせとおかずを取り分ける。

小食のハルが、自分の弁当を食べた上でオレの手料理を食べられる訳もない。
だから、当然のように、ハルがオレの弁当を食べた分だけ、オレがハルの弁当からおかずを頂戴する。