「……あ!」

「どうしたの?」



ハルが目の前の皿に向かっていた手を止め、不思議そうにオレを見た。

慌てて笑顔を作る。



「や、今日も沙代さんの飯は美味いなって」

「うん。ホント、沙代さん、お料理上手だものね」



ハルは、オレが他のことを考えているなんて思いもしないのか、優しくほほ笑んだ。



土曜日の昼。

ハルの通院に付き合い、そのままハルの家にお邪魔して、一緒にランチ。

トイレに行くふりをして、コッソリ沙代さんにリクエストをした。

おふくろに言われた通りに、今日はハルと同じ味付けにして欲しいって。



そうして出されたのは、トマトとバジルと魚介のパスタ。
付け合わせは、もやしとキュウリとツナのサラダ。

いつものように、色鮮やかで盛りつけも美しい二皿。



けど……

どっちも、味が薄い。



魚介の旨味やトマトの酸味が効いていて、パスタソースは、十分美味しい。

サラダもシャキシャキしていて、素材のうまみが感じられる。

けど、オレ的には、どうしても、もう一塩……と声を上げたくなる。



「いかがですか?」



沙代さんが面白そうに聞いてくる。



「うまいよ」



そう答えたのに、沙代さんは、オレの感想を先に読んでいたのか、



「味が足りなければ、胡椒かお塩をお使いくださいね」



笑いながらそう言った。

よく見るとテーブルの真ん中に塩と胡椒が出されていた。



   ☆   ☆   ☆