「あの、……違うの。ただ……」



オレは、急かさないように、意識してゆっくり言葉を返す。



「うん」

「……ただ、ね。……幸せ、……だな、って」



ハルが目を潤ませたまま、照れたように優しくほほ笑み、そうささやく。

そして、にこっととろけそうな笑顔を見せてくれたハルの目から、再び涙がこぼれ落ちた。



え、それ、まさか……うれし涙!?



そんなハルを見て、オレが冷静でいられる訳もなく、



「ハルっ!!」



速攻、お椀をサイドテーブルに置いて、ハルを抱きしめたとしても、仕方ないと思う。

勢いが良すぎて、お椀から雑炊がこぼれたとしても、……仕方ないよな?



「カナ……いつも、本当に、ありがとうね」

「や、ハル、それ、オレの台詞だから!」



本当にそう。

結婚したいってのも、一緒に暮したいってのも、言ってしまえば、全部、オレのわがままだった。

ハルは全部、オレの望みを叶えてくれた。



ハルを抱きしめ、ハルの髪に手をやり、ハルの頬をなでる。

ハルの額に口づけ、頬を寄せ、そっとキスをし、……そのまま、ハルの唇に……。



「カ、……カナ!?」



ハルが慌てたように、オレの身体を押し返して来た。