それから……
はい、あーん
と言いたいところだけど、さすがに、それは嫌がるだろうと、ただ笑顔で差し出した。
「はい」
ハルが何故か虚を突かれたように動作を止め、それからオレの方を見た。
オレは何もなかったように、「どうした?」なんて、とぼけてみる。
数秒後、普段なら、照れて、絶対に口を開けないハルが、小さな口を開けたので、オレは驚きつつも、いそいそとハルの口に雑炊を運んだ。
「……ありがとう。美味しい」
何故か、ハルの目には涙が浮かんでた。
「熱かった!? 大丈夫?」
「……ううん。ちょうど良かった、よ」
そう言いながらも、ぽろりとハルの目からは涙がこぼれ落ちる。
「ハル!?」
オレは慌てて、用意してあったおしぼりでハルの涙を拭う。
「……ご、めん。なんでもないの」
「何でもなく、ないよね?」
オレとハルの間で遠慮は禁物。
隠し事も禁止だ。