彼は冷たい。でもそれはわたしだけ、わたしだけ特別だった。
でもそれは嫌だった。

彼は優しい。でもそれはわたしじゃない。たった一人の人だけ特別だった。
ずっとそれが嫌だった。

「…勘違いするな。俺は美沙だけが好きだ…」

「でも…生んでほしいって…」

彼の想ってることが全くわからない。
もうわたし達、終わり…なの?
終わりだったらわたし…どうやって過ごせばいいの?

「美沙…ごめん…」

抱きしめる彼、でもわたしは拒んだ。

「やめて!」

「…もう…わからないんだ…」

彼が泣いた。
きれいな泣き顔で想わず見とれてしまった。

「俺は…もう…ダメなんだ…」

わたしは彼を抱きしめた。

「…ダメなんかじゃ…ないよ…?こっちこそごめん…」