「…よかった」

傷を負った彼は優しくて、哀しい目をしていた。
「春也…わたしね…左耳がもう…聞こえないの…」

「え…」

春也はわたしを抱き締めていた手をゆるめた。
キライにならないで…わたしを…

「…美沙は…美沙だよ…だから泣くな。不細工な顔がもっと不細工になる…」

やっぱり傷を負った彼は冷たかった。
でもホッとした。いつもの彼だから…

「な…美沙…東京に帰ろう?ここは寒い…」

「田舎だからね、でも学校が…また転校しなきゃいけなくなる…。せっかく友達出来たのに…」

「…じゃあ…いっしょにここ住んでいい?」

「え!?そんなこと出来るの?仕事とかは?」

彼はニコっと笑う。

「こっから会社いく」