「あんたこれが何のハンカチか知ってたの?」

「知ってたよ。真子がめちゃくちゃ大事にしてたから」


こいつは知ってて、わたしに話しかけたんだ。あの日駅でわたしがハンカチを落とした時、色できっと真子じゃないとわかったはずだ。わかっててわざと真子であるか訪ねたんだ。わたしを真子に重ねたんだ。

そんなに忘れられないくらい、真子のことを好きだったんだ。


小さな笑いがこぼれる。点と点が繋がった気がした。わたしをデートに誘ったのも、今日の彼の行動も、すべて。“わたし”じゃなくて“真子”に対しての行動、言葉だろう。

変に勘ぐる自分も、それに振り回されてる自分も馬鹿らしい。そして同時に、彼に腹が立つ。苦しいのは、あんただけじゃないのに。

真子はこの意地悪そうな所が好きだったのかな。真面目だし、ちょっとおちゃらけた所が刺激的だったのかもしれない。でも勉強はできるみたいだしそこは話が合うんだろうな。


このデートに、この場所に、いるはずのわたしがいない気がした。