夏が好き。1番好き。

夏の入道雲。雨の降る前の匂い。

誰もいない教室。喫茶店のお気に入りの場所。

あたしはこの場所で、一生の思い出となる3年間を贈ると決めた。

東京からすこし離れた神奈川の湘南の近くの高校。湘南東高校。


頭はたぶんいい方の学校だけど、学校は結構古い。でもあたしは気に入ってる。


今年の春から湘南東高校の1年生になる

棗 あずさ。

この日は、入学式。

あたしは新しい教室にいる。
窓側の1番後ろ。特等席。やったね!!

ふと、外を見ると野球部やらサッカー部やら運動部が朝練していた。

「おーい、あずさ!」

「おいっす!ぐっちー、夏」

親友の坂口 夏。明るめの茶髪のロングヘアーでサバサバしてる。かわいいっていうより美人。大人っぽい。中学の時から一緒にいる。

「もう、あずさ朝早すぎ!!」

「わりいわりい、朝きもちーんだもんよ」

「ねみーよ、こっちは。朝ごはんもまだ食べてねーし」

ぷんぷん言いながら朝ごはんのおにぎりとサンドイッチをばくばく食べる夏はなんだかんだ文句言いながらもあたしのマブダチだ。

「あ、そーいえば夏!クラスは?どうだった?」

自分の分だけ見て夏の見るのを忘れていたんだ。

「はあ、一緒!!1-A!」

「うっひょい、まじかい!ハッピー!」

「よかったなあ、あずさ。こーんな親友が同じクラスの高校生活は。」

「キャッハッハ。うれしーよ、夏」

春のまだ暖かいそんな空気の中の教室。
そんな入学式の日だった。

クラスにも慣れてきて友だちにも慣れてきた5月中旬。

あたしはきょうも特等席で授業を受けつつも外のどこかのクラスの体育をぼんやり見ていた。

あっ、あの先生知ってるや。
生活指導で怒られたひとである。
学校は高速が厳しいのだ。
その中でも夏とあたしは、群を抜くギャルだ。
夏は明るめの茶髪だし、あたしは金髪の中にピンクが混じっている。
メイクは濃すぎるくらい濃いし、机の上に教科書は乗っていなくてスケジュール帳とメイクポーチ、non-noとかviviとかのファッション雑誌だらけ。

それでも勉強は嫌いじゃない。
テスト前は必死に勉強するし、クラスの子たちとも仲がいい。
ただ自分らしく生きたかったんだ。
それに夏も付き合わせちゃってるけども。

「おーい!!おーい!」

ん?声が聞こえる。

窓から下を覗くと、体育着を着た1人の男子高校生がニコニコ笑いながら立っていた。


「棗 あずさ ちゃんだよね?」

その男は、満面の笑みであたしを見ながら言った。

「そうだよね?」

「そうだけど?だれ?」

「俺、2年B組の染谷 壱聖!よろしゅうな!!」

いっくんの第一印象は黒髪のゆるくパーマがかかった関西弁混じりの笑顔が似合う男だった。


「あん?あんた、なんであたしの名前知ってんの??」

「あずさちゃん有名人だもん。」

「はっはーん。あんた、あたしが綺麗すぎて惚れてんだろ〜」

「うん、そうだよ」

「は?「おーい、棗なにしてんだー」

そうだった。いまは授業中で、あたしは窓から身を乗り出して変な男と大声で話してたんだった。

「青春してたー」

「青春はいいけど、ちっとは勉強しろ〜〜」

「へいへーい」

クラスで笑いが起こってしまった。

あたしは、もういちど窓の外に身を乗り出して下を見ると、あの男も体育の授業中だったらしく先生に怒られたようで戻っていった。


変な男め!!

授業が終わると夏が近寄ってきて、がやがや言われたけど、あんま気に留めてなかった。

次の日の5限目。

お昼の後の1番眠くなる時間。

夢の中に入りそうになっていた時、コツンと窓になにかが当たって起きた。


ん?下を見ると、あの男が立っていた。

げっ。

先生に怒られないように、口パクで言った。

「なに?」

そしたらあっちも、口パクで返してきた。

「屋上、きーへん?」

「いま、授業中!」

「サボローよ」

そう言うとニコニコして、校内に入ってしまった。

サボるとか。なんであの男に指図されなきゃいけないんだよ。

んー。まあ、寝るだけだし。
いってやるか。

「せんせーい。はらいてーから保健室行くわ。」

「なんだ〜?変なもんでも食ったか?」

「アイス食べ過ぎて下痢〜。」

「きったねーな、いってこーい」

「ラジャー」

教室をでて、プールがある屋上に向かった。

扉を開けると、プールに足を突っ込んでプールサイドに座るあの男がいた。

「おー。きたか!!」

「きたかじゃない。なんなのさ!」

あの男の隣に座り靴下を脱いでプールに足を突っ込んだ。


「あずさちゃんと話したかってん」

「なんでさ」

「ゆうたやろ?惚れてんねん」

「なーに言ってんの。あたし綺麗だけどあなたと会ったことない」

「んーせやなあ、あずさちゃんが会ったことなくても俺、見てたもん」

平然と恥ずかしいことを言って、満面の笑みで言うから顔が赤くなるのを夏の暑さのせいにしそうになる。


「どこで!なんで!」

「アッハッハ、やっぱりおもろいなあ」

「ああ?バカにしてんの?」

「してへんよ、普通の子よりも俺、好きやねん元気の方が」

「ふーん、さーんきゅーう」

「俺、モテるんよ」

「あ?自分で言うなよ」

「顔はええやろ?よく言われるんよ」

「うーん顔はいいけどそのナルシスト加減はいやねえ。」

「ほんまやで?嘘思ってるやろ〜」

「じゃあ彼女は?」

「彼女いたらあずさちゃんのこと口説いたりせーへん」

「あずさでいいよ、ちゃんはきもいわ」

「あずさは?彼氏いるの?」

「あたしは、いないよ。好きな人としか付き合わないもん。」

「おおー。じゃあ俺にもチャンスあんねや」

「どうだろうねえ」

「よし、じゃあLINE交換しよか」

「いいよ」

交換して、また満面の笑みでニコニコしていた。

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