「理由がないと電話しちゃいけない?」

拓海はぽつりと言った。

そういえば、奏汰も美鈴を誘った時、同じようなこと言ってたのを思い出す。

「そういうのをはぐらかすっていうのよ。」

奏汰には言えなかったことを言った。

拓海の本心が見たいという気持ちが美鈴の胸の奥でふつふつと沸いていた。

「はぐらかしてるわけじゃないよ。僕自身よくわかんないんだ。どうして君に電話なんかしてるのか。」

「私のこと好きなんじゃない?」

美鈴はそう言ってしまってから少し後悔した。

こんな追い詰め方したら、拓海はきっとまた離れていってしまう。

せっかくここまで近づけたのに。

でも、スマホの奥の拓海の口からは意外な言葉が聞こえてきた。

「そうかもしれないね。」

そう、なんだ。

いや、そうかも、しれないんだ。

美鈴の胸がきゅうっと締め付けられる。

心臓がドキドキしている。

いてもたってもいられないくらいの体中からわき上がる拓海への思いが爆発寸前だった。

こういう時、拓海はどう言ってもらいたいんだろう。

咄嗟には思いつかなかった。

しばらく考えて言った。

「あなたのこと、もっと知りたいわ。」

拓海のかすかな息づかいが聞こえる。

それがため息なのか深呼吸なのかはわからないけれど、呼吸を整えてるような気がした。

「じゃ、今度バイト帰り、食事でもどう?」

拓海らしくないと思った。

「いいよ。その時、色々教えてくれる?」

「まぁ、気が向いたらね。」

拓海らしい返答だと思って安心した。