「さっきのは冗談だけどさ。お前が本当に身内のことや友達のこととかで困ったことがあれば何でも相談しな。俺にできることなら何でも助けてやるよ。」

「そう。心丈夫だわ。」

美鈴は本当にそう思った。

「でさ、さっきは美鈴がえらく過敏に反応して途中になった話だけど、」

次のお寿司に手を伸ばしながら美鈴は首を傾げた。

「バイトの男前。すげー男前だけど、なんか暗いやつだな。」

「そ、そう?」

奏汰の目を見ずに答えた。

「仕事柄、だいたい相手の目を見れば深い闇を背負った奴、結構見抜けるんだよね。別に犯罪犯しそうとかそんなんじゃないけど、なんていうか胸の中がクリーンな奴とそうじゃない奴って存在するんだ。バイトの男前くんは、どちらかといえば後者だなと思って。」

美鈴はその話を聞いていてかなり不愉快だった。

心に闇があって悪い?だからどうだっての?

でも、せっかくご馳走してくれてる奏汰に噛みつくのは失礼だと思い、ぐっと堪えた。

「で?」

それだけ言うのがせいぜいだった。

「で?っていうか。ああいうタイプって、その闇に寄ってくる悪い奴にだまされたりすることもよくあるからさ。お前にとって大事なお友達なんだったら、気をつけてやれよ。」

「彼は大丈夫よ。彼はいつも冷静だし、頭のすごくいい人だから。」

「頭のいいやつほど、そのスキや弱みを狙ってもってかれるケースは多いんだぜ。お前みたいなおつむの弱い人間にはない話だけどな。」

「何それ。」

そう言いながらもあまりにもおいしいお寿司に手は伸びる。

「お嬢ちゃん、よく食べるね。見ていて気持ちいいわ。」

カウンターでお寿司を握りながら大将が笑った。

思わず顔が熱くなる。

こういうのがお子ちゃまだっていうのよね。

「ま、そのお友達がもし困ったことあった時でも俺相談に乗ってやるから心配すんな。それだけ。」

奏汰はいつになく無表情のままビールを飲み干した。