咳き込んで水を飲んでる美鈴に、宮浦さんは頭をかきながら「ごめんごめん」と申し訳なさそうに謝った。

ほんと勘弁してほしい。

水を飲んで少し呼吸を整えてゆっくりと言った。

「お付き合いはしていません。ただのバイト仲間です。」

宮浦さんは、きょとんとした顔をした。

その返答がそんなにも意外なものだったんだろうか。

美鈴の方が逆に意外な気持ちになる。

そこへ、タイミングよく宮浦さんの前にカツカレーが運ばれてきた。

「おっ、おいしそう。」

宮浦さんは丁寧に「いただきます」と言ってカレーを食べ始めた。

美鈴もホッとしてカレーを頬ばる。

「拓海が、うちの店に女の子連れてくるなんて初めてだからさ、てっきりそういう関係かと思っちゃって。失礼なこと言ってごめんよ。」

宮浦さんは、カレーを食べながらそう言った。

そうなんだ。

私が初めてだったんだ。

嬉しくて、頬が熱くなった。

「拓海のことは、小学生の頃から知っていてね。かわいがってるんだ。あんな男前なのに、結構変わってるだろ?」

美鈴はうんうんと2回頷いた。

それを見て宮浦さんは優しい顔で笑った。

「あいつは、ああ見えて結構苦労してるんだ。だからちょっと変わり者なんだけど根はすごく真面目でいい奴だからよろしくね。」

「はい。」

「基本、あいつは女性が超苦手だけど、嫌いじゃないから。」

苦手だけど嫌いじゃない。

なかなか難しいことを言う。

首を傾げて宮浦さんを見た。

「こんな話していいのかわかんないけど、なんとなく美鈴ちゃんには言っておいた方がいいような気がしてたんだ。今日、こうしてばったり出会えたのも何か意味があるのかもしれないね。」

宮浦さんはそう言うと、お水を飲んで少し遠い目をした。