その夜、店長から電話があった。

「美鈴ちゃん、迷惑かけてごめんよ。どうだい店の方は。」

「店長!体は大丈夫ですかぁ?寂しいですよー。」

「ははは、ありがとう。幸い、来週には退院できそうだから。」

「よかったぁ。早く帰ってきて下さい。」

「僕なんかより、美男子の彼と一緒に仕事してる方が楽しいんじゃないの?」

また、美男子とか言うし。

「そんなこと全然ない!変わり者だから、付き合い辛いったら。もう疲れちゃったわ。」

「美男子すぎて緊張して疲れてんじゃないの?」

店長は電話の向こうで笑った。

よかった、元気そうだ。

「店長は来週退院ですぐお店には戻れるんですか?」

「うん、来週の中頃には戻れると思うんだけどそれまで大丈夫かな?大学の方もいける?」

「はい、なんとか大丈夫です。」

「それでね、これは相談なんだけど、」

店長が相談だなんて珍しいと美鈴は思った。

「僕も今回のことで、やっぱり年齢には逆らえないなぁと痛感しているんだ。復帰したとしても、基の状態に戻るにはしばらく時間もかかりそうだし、拓海くんにしばらくうちで働いてもらいたいと思ってる。」

拓海が、ここでしばらく??

「ただ、美鈴ちゃんがどうしても気に入らないのなら、また別の人材を考えるつもりだよ。僕の拓海くんの印象はとてもいいから、できれば拓海くんにお願いしたいんだけど。」

「いや、それは私がどうこう言える立場ではないと思うし。」

ぼそぼそと電話につぶやく。

これからも、お店で拓海と一緒に働く?

嫌かと聞かれたら、正直嫌じゃない。

だけど、これ以上近づいたら、美鈴は自分の気持ちが爆発してしまいそうで怖かった。