「君の手って・・・」

ゴクリと喉が鳴る。

「ごつごつしてて男みたいだなって思ってた。」

一気にドキドキのマックスがしぼんでいく。

「何なの?!」

美鈴は思わず素っ頓狂な声で叫んだ。

「だから不謹慎なこと考えてたって言ったじゃん。」

「剣道してたら、嫌でもごつごつした手になっちゃうの。ほっといて。」

「ほっとくも何も、君が聞きたいって言ったから言っただけ。」

拓海は半分笑いながら、空の段ボールを抱えて店の奥へゆっくりと歩いていった。

全く、腹の立つ奴!

そして、馬鹿な私。

何期待してたんだ。

あんな奴に。

拓海は女嫌いで触れられることすら無理な人なのよ。

私と同じ気持ちでなんかいるはずないじゃない。

わかってたはずなのに、どうしてそんなこと考えちゃったんだろ。

美鈴は認めたくない自分の気持ちを必死にかき消していた。

胸の奥がずきずきと痛む。

あー、早く店長戻ってきて。

いつもの穏やかな空気の中で仕事がしたいわ。

美鈴は最後の一冊を書棚に収めた。