「拓海がどうしてああなのかって、彼の男友達すら知らないみたい。きっと言いたくないのね。彼には秘密が多いの。それが逆に魅力的なんだけど。」

薫は寂しげに微笑んだ。

少し強がって拓海のことを話してるけど、薫はまだ拓海のことが好きなんだと思った。

「そうそう、明日、よかったらお手伝いにいけるわよ。それも言いたかったの。」

「あ、そうなんだ。」

「あら、やけに素っ気ない言い方するのね。ひょっとして迷惑だったりする?拓海と二人きりの方がよかった?」

薫はいたずらっぽく笑った。

「それはないよ。だけど、薫も忙しいし、無理しなくても二人で今のところなんとかなってるから。」

「そう。」

美鈴は自分でも、どうしてせっかくの薫の善意を素直に受け止められないのかわからなかった。

今までだったら、きっと喜んで「お願い!」って言ってたはずなのに。

「もし手が必要なら、遠慮なく言ってね。すぐ駆けつけるようにするから。」

「ありがとう。」

薫の目を見れずに言った。

「ひょっとしたら、」

「ん?」

「美鈴なら拓海の深い部分引き出せるかもしれない。」

「どうして?」

「だって、美鈴も変わってるから。」

そう言い終わらないうちに薫は吹き出して笑った。

「ひどーい!」

美鈴は、薫の腕を押した。

だけど、そんな風に言われたことは嫌じゃなかった。

まぁ、所詮無理な話だとは思うけど。

その後、薫と久しぶりにたわいもない話をして、早めに店を後にした。