美鈴は薫の声色が変わったことに気づかないふりをして、パスタを頬ばった。

「でもさ、拓海のどこがそんなにいいの?女として拒絶されてるわけでしょ?」

「逃げれば追いたくなる習性ってやつかな?」

薫は前髪を掻き上げながら寂しそうに笑った。

「あとは、やっぱりあのルックス。なかなかいないよね。あれだけ整った顔とスタイル持ってる男って。」

確かに。

美鈴もそこは否定できなかった。

それ故に、なんだかしゃくに障る。

素直に、拓海をかっこいい、好き・・・って認めたくなかった。

美鈴は昔から見た目だけで男は判断できないと思ってきた。

大抵顔が好きになって告白した相手には振られてきた美鈴にとって、それが恋愛を始めるためのルールみたいなもの。

相手の内面を知ってから好きになるっていう。

「古くさい」と言われようが、美鈴はそれを守っていくことが美徳だと思っていた。

だけど、拓海は、随分慣れたとはいえ、あの顔でじっと見つめられたらドキドキしないようにする方が難しい。

それが、好きという気持ちなのかはわからないけど、嫌じゃない。

「美鈴は、拓海のことどう思う?やっぱり変わり者っていう印象そのまま?」

急に薫はふってきた。

一瞬慌てて、顔が熱くなる。

ならないでおこうと思えば思うほど熱くなっていった。