お腹の虫はいつ何時も正直だ。

美鈴は思わず鳴ったお腹をさすりながら笑った。

「さ、食べよ。」

薫は美鈴にフォークを差し出した。

一口頬ばると、自分がどれほどお腹が空いていたのか実感した。

黙々と食べ続ける美鈴に、薫は笑いながら言った。

「思春期の少年みたいな食べっぷりねぇ。ほんと、美鈴は何でもおいしそうに食べるから大好きよ。」

「もうそんなこと言わないで。食べにくいよ。今日はやけにお腹減っちゃっててさ。」

それも本当だけど、なんだかその後の薫の口から飛び出す告白を聞くのを避けたい気持ちがそうさせていたのかもしれない。

美鈴は食べ終わると、お冷やを一口飲んだ。

薫のお皿には、まだほとんど手つかずのパスタがのっている。

「食べないの?」

思わず聞いた。

「ゆっくり食べてるだけ。気にしないで。」

薫はそう言うと、美鈴に気を遣ってか、パスタをひとすくい口に入れた。

「あのさ、こないだの話。」

とうとう来たか。

美鈴は、テーブルの下の握りこぼしに力を入れた。

「こないだの話?」

とりあえずすっとぼけてみる。

嫌な性格だよな、と思いながら。

「拓海と付き合ってたみたいな話。」

「ああ、そういえばそんな話してたよね。」

なるべくさりげなく、自分の動揺を悟られないように言葉を選ぶ。

「ごめんね。きちんと話してなくて。」

「いいよ、そんなこと。だって、薫は昔からもてるから、付き合った全ての男を紹介してもらってるだなんて、私も思ってないよ。」

「ううん、そんなことない。拓海とは食堂で一緒にいる時顔合わせてたのに、なんだか言いたくなくて敢えて知らないふりしてたもん。美鈴に嘘付いたことまず謝りたかったの。ごめんね。」

「いいよー。全然気にしてないから。」

気にしてない。

嘘つかれたことは全然気にしてなかった。