「君って、結構痛いところついてくるよね。」

拓海は小さな声で言った。

剣道してると相手のツボが見える。

知らず知らずのうちにそうやって人の気持ちを突き刺していることがこれまでも何度もあった。

気をつけてたはずなのに。

「だけど、痛いところ敢えて触れずにいてくれる時もあった。」

なんとなく拓海の表情を見るのが怖くて、おにぎりのゴミを片付けるのに集中してるふりをしていた。


「ごめん。」

片付けながら、つぶやいた。

「別に大丈夫だよ。分かってくれてる方が逆にこれからやりやすいし。」

「うん、あなたには決して、触れないから安心して。」

「うん。」

「・・・だけど、女が苦手っていうけど、誰かを好きになったことはないの?」

ここまで来たら、思いきり遠慮なくしちゃえ。

そんな勢いづいた美鈴は早口で聞いた。

「どうなんだろう。誰かを好きっていう気持ち、よくわからない。嫌いじゃないっていう感覚でしかないんだ。」

「恋い焦がれたり、特定の異性にドキドキしたり、キスしたいとか思ったことないの?」

生真面目に質問してくる美鈴に、拓海は思わず口元が緩んだ。

「結構せきららな質問だね。ひょっとしたらそういうのに近い感情も今まであったかもしれないけど。いずれにしても途中で萎えちゃうかな。面倒くさい方が先行する。」

「私は絶対無理だわ。とりあえず、好きになったらまっしぐら!そして撃沈!バイバイ!って感じ。」

「わかるような気がする。」

拓海は初めて声を出して笑った。

美鈴は、そんな拓海を見て、なんだか嬉しくなった。

この人は・・・

もっと笑わなきゃダメだ。