薫とどうしてたった2週間で別れてしまったんだろう。

聞きたいけど、きっと拓海はそういうの聞かれること嫌がるんじゃないかと思って黙っていた。

「どうして別れたか聞きたいんじゃないの?」

そんな私の気持ちを見透かしたかのように拓海はニヤッと笑って私を見ていた。

鼓動が急に激しくなる。

「聞いていいの?」

「言わない。」

美鈴はムッとして言った。

「じゃ、振らないで。」

「嘘だって。どうせ薫から聞くんなら、俺から言うよ。大したことじゃないし。」

「そこまで言うなら聞いてあげる。」

拓海を見ずに言った。

「君って変わってるね。」

「あなたほどじゃないわ。」

そう言ってから、美鈴は思わず吹き出した。

拓海をちらっと見ると、拓海もサンドイッチを加えながら、まんざらでもなさそうに微笑んでいた。

能面男の能面の下の表情が少しずつ見えてきた。

「正直女って面倒くさいし、疲れるし、苦手なんだよね。今まで何人か付き合ってみたけどやっぱり続かない。女って独占欲強いし、何かとベタベタしたがる。俺無理なんだ。」

今まで聞いた中で一番長くしゃべったんじゃなかろうか。

思わず、澄んだその低音に聞き入ってしまった。

「だろうね。」

美鈴はお茶を飲みながら答える。

「だろうね、って?」

拓海もコーヒーを飲みながら美鈴をちらりと見やる。

「だって、私がおつり渡す時に触れられるのすら避けてたでしょ。相当女と接触するのが嫌なんだと思った。」

美鈴は言いながら、ようやくその謎が解けていくのを感じて、妙にホッとしていた。

でも、拓海の表情は一瞬こわばったように見えた。

言っちゃいけなかったのかな。

後悔先に立たず。

言っちゃったもんは仕方ない。