二人して並んで、沈黙でひたすら食べる。

こんなに苦痛な食事ってあったかしら?

美鈴は、おにぎりをゆっくりと咀嚼しながら思う。

一人で食べる方がずっとましだわ。

なんだか落ち着かない。拓海が近くにいると。

何かしゃべりかけても、「女ってうっとうしい」とか思われそうだし。

静かな店内に、少しおさまってきた雨音がしとしと流れてきていた。

「薫と付き合ってたって言ったけど、たったの2週間だから。」

急にそんなこと話し始めるもんだから、思わずおにぎりが喉に詰まった。

ゲホッゲホッツ!

激しくむせる美鈴を拓海は「大丈夫?」と言いながらのぞき込んだ。

「な、何よ、いきなりそんな話。さっきは振ってほしくなさそうだったのに。」

お茶を一口飲んで、ようやく呼吸が落ち着いてきた。

「まぁね。だけど、あんまりにも静かだからさ。」

「確かに静かすぎて私も落ち着かないと思ってたけど。」

「薫がどうして君に俺と付き合ってたこと言わなかったって言ったら、ほとんど付き合ったとはいえないような関係だったってことだよ。」

「そうなの?まぁ、たった2週間だもんね。」

「そ。」

「何?薫のフォローしてんの?」

「そういうわけじゃないけど。」

「さっきも、コンビニ行くとき私についでがないか聞いてきたりしてたけど、あなたって結構気が利くのね。」

「そう?」

「意外だったわ。」

「失敬な。」

拓海は少し笑った。

笑うと、能面男とは別人になる。

冷たい空気が一変して柔らかくなるような。