二つ作ってきたおにぎりのうち一つを食べ終わった。

マイボトルのお茶を飲む。

あー、至福の一時。

美鈴は目をつむって、本の香りを楽しんだ。

「なにやってんの?」

急に頭上から拓海の声が響いた。

「さいあく。」

思わず口からもれる。

そういいながら自分の顔が熱くなるのが分かった。

見下ろしている拓海の整った表情と深い瞳が、また美鈴の胸の奥をざわつかせる。

拓海はレジの横の丸イスに座っていた美鈴の横に、もう一つ自分用のイスを持って来て座った。

並んで食べるの?

なんだか落ち着かないんですけど。

すぐ真横に拓海の顔が来る。

拓海は素知らぬ顔で買って来たサンドイッチにかぶりついていた。

相変わらずきれいな横顔。

一瞬見とれて、すぐに我に返る。

「あなたは、おにぎりよりサンドイッチ派?」

「別にそういう訳じゃないけど。」

会話の続かない奴。

美鈴はお茶を一口飲んでおにぎりにかぶりついた。

拓海がそんな美鈴を一瞥して言った。

「君はおにぎり派?」

口の中のおにぎりを全て飲み込んで憮然と答えた。

「別に。どっちでもないわ。」

拓海はそんな美鈴を見て、吹き出した。

「一緒じゃん。」

拓海は尚もおかしそうな顔で美鈴を見ていた。

拓海の笑いのツボがわからない。

美鈴はそう思いながら、軽くため息をついて、またおにぎりに口をつけた。