「美鈴の働いてるお店、久しぶりに来たような気がする。」

薫は興味津々な様子で本棚をキョロキョロと眺めながら美鈴の後に続いた。

「そうだね。あんまりこないもんね。本屋は好きじゃない?」

「そうね。読書はそれほど好きじゃないかな。アウトドアだから。」

「はは、一見静かに読書してそうな雰囲気だけど、全然違うもんねぇ。」

「何、それ。」

薫は笑いながら、私の肘を軽く押した。

「二人は仲がいいんだね。」

拓海はリュックを下に置いて、薫の方を見た。

「そうよ。知らなかった?」

「薫には友達はいないんだと思ってた。」

「ひどぉい!」

薫は拓海を軽くにらんだ。

「薫と拓海くんも仲がいいよね。」

二人の掛け合いを見ている美鈴の胸の真ん中がずきずきしている。

言わなくていいことを言ってしまったとをすぐに後悔した。

薫の動きが止まり、二人は視線を合わせた。

「言ってないの?」

拓海がぽつりと薫に尋ねた。

言ってない?

何のこと?

美鈴の動悸が激しくなる。