自転車をかっ飛ばして、お店に向かう。

朝の空気。

こんな早くからお店に出るのって久しぶりだから、空気も新鮮だった。

お店の前に人影が見える。

え?もう?

既に拓海と薫らしき二人が店の前にいた。

談笑している。

あんな和やかな表情を浮かべるんだ、拓海っていう人は。

そして、薫もいい香りのする長い髪を掻き上げて、嬉しそうに微笑んでいた。

その間に入りにくい雰囲気を察する。

だけど、しょうがない。

美鈴がお店を開けないことには始まらない。

「おはよう!二人とも早いね。」

「あ、美鈴、おはよう!早起きしなくちゃって思ったら、あまり寝れなくて早めに家を出ちゃった。」

「あんまりはりきらなくていいよー。薫はボランティアなんだからさ。」

「そうなの?」

拓海は薫に顔を向けた。

「うん。美鈴と拓海、拓海くんだけじゃ大変だと思って、ボランティア名乗り出たの。」

拓海はふぅんと頷いた。

「ちょっとそこどいて。扉開けるから。」

拓海の体をどけようと出した手をすぐに引っ込めた。

「ああ、ごめん。」

拓海はさっと避ける。

触ってないんだから、そんなに避けなくてもいいじゃないと美鈴は心の中で思う。

「はい、どうぞ。お入り下さいな。」

美鈴は開けた引き戸のカーテンを開けながら言った。