「とりあえず、これ。店長から今週のスケジュールをざっくり聞いてきた。」

「店長、そんな話ができるくらい元気なの?」

「だって盲腸だし。麻酔から覚めたら結構元気にしゃべってた。」

「早めに退院にはならないのかしらね。」

「店長の回復力にもよるんじゃない。ても、店長も結構年だからね。無理はしない方がいいと思う。」

「そりゃそうだけど。」

そうなんだけど、全く自信ないよ。

店長からざっくり聞いてきたというスケジュールの紙を見せてもらう。

図書の入庫も三回ほどあるし、新刊ポスター掲示もしなきゃなんない。

本の並べ替えも!

こんなの私一人で指示してできるわけないじゃない。

どうしよう。

「大丈夫だって。」

拓海の声が私の頭上から落ちてきた。

「たったの1週間。何とかなるでしょ。この1週間は僕も講義さぼるつもりだし君がいないときも対応できるよう早く仕事覚えるよ。」

能面男のくせに、えらく親切なこと言ってくれるじゃない。

ちらっと拓海を見ると、じっとこちらを見つめていた。

深い色の、大きな瞳で。

いやいや、こんな状況でドキドキしてる場合じゃない。

今は、拓海と何とか店を切り盛りすることだけに集中しよう。

「わかった。頼りにさせてもらうわ。」

「明日は何時に入ればいい?」

「とりあえず、仕事の内容の説明もしたいし、色々準備もあるから、9時には来て。」

「了解。」

そう言うと、拓海はすくっと立ち上がった。

美鈴も慌てて立ち上がる。