大学生?

じゃ、同じ大学ってこともあるわけね。

確かにこの書店に来る大学生は多かった。

大学の最寄り駅のすぐ横にあったから。

そんな大きな書店でなないけれど、店長さんのセンスの良さで大型書店には負けないくらいの厳選本が並んでいる。

美鈴は、ハタキを持って本棚を叩き始めた。

そして、少しばかりその美男子くんを想像してみる。

法学部で分厚い眼鏡かけて、女の子になんてまったく縁がないような堅物男。

50過ぎの店長がいう美男子なんて、たかが知れてるわ。

ちょっと背が高くて鼻筋くらいは通ってるかもしれないけど。

あんなお堅い本ばっか読んでるんじゃぁ、ロマンチックな雰囲気とは縁遠いはずよ。

学生だったら、もっと人生を学ぶような深い小説読んで、内面磨いてもらわなくっちゃぁ。

そんな美鈴も、高校まで剣道一筋だったから、ロマンチックなんてほど遠い人間だったけれど。

それだけに、男性にはこうあってほしいという理想が強いのかもしれない。


「あ、ちょっと待ってねぇ。」

外で店長の声が聞こえて、そのまま小走りに店に入ってきた。

「美鈴ちゃん、ほら、さっきの予約本。どこ?」

へ?もう来た?

美鈴も慌てて、レジまで走って、

「ここです。」

本の入った袋を持ち上げた。

店長は手早く本をレジに並べていく。

「美鈴ちゃん、後はご本人さんに確認してもらってお会計頼んだよ。」

そう言うと、意味深な笑みを浮かべて、レジを離れた。

「こちらです、どうぞどうぞ。」

店長は、店内に入ってきた人影にペコリと頭を下げて、また外の作業に戻って行った。

・・・こいつか。

感じの悪い美男子とやらは。

美鈴は、ゆっくりと視線を上げた。