「そうだったんだ。」

全く役に立っていない自分にしょんぼりした。

拓海もしばらく黙って座っていた。

そして、ふいに彼の声が隣で響く。

「でさ。ここからが本題なんだけど。」

「本題って?」

拓海の方に顔を向ける。

思いの他拓海の顔が近くて、慌ててうつむいた。

「店長が1週間入院している間、君に店長代理お願いしたいって。」

「わ、私?!私が店長代理?」

そんなの無理だよー。

単なるバイトの身で店長代理だなんて。

美鈴は泣きそうな気持ちで拓海の顔を見上げた。

拓海はくすりと笑う。

「捨てられた子犬みたいな目になってる。」

「・・・こんな時に冗談言わないで。」

少しムッとして拓海をにらんだ。

「ごめんごめん、大丈夫だよ。店の切り盛りは君一人じゃない。僕も手伝うよう言われてるから。」

「大丈夫だよって、・・・えー!」

思わず大きな声が出た。

「あなたが手伝うの?店のこと何も知らないんじゃない?」

「知らないよ。君が店長で僕がバイトって位置関係。指示された事はきっちりやるから、頼むよ。」

「何それ。」

「店長がそう僕にお願いしてきたんだ。しょうがないよ。」

「しょうがないって。」

店長!!!

なんでこんなやりにくい能面男にそんなこと頼んだのよ!

思わず、背後にそびえ立つ市立病院を見上げて心の中で叫んだ。