手を洗って、うがいをして、一呼吸置いてから、店長の携帯に電話をかけた。

呼び出し音がしばらく鳴っていたが、どうやら携帯に出れない状態なのか留守電サービスに切りかわった。

「なんだろ。」

一気に不安が膨らんでいく。

その時、携帯が鳴った。

店長からだ!

すぐに出る。

「もしもし、遅くなってすみません、美鈴です!」

「・・・。」

「もしもし!店長大丈夫?何かあったの?」

「あの。」

その「あの。」という声は、明らかに店長の声ではなかった。

もっと若くて、確か最近聞いたことのある声。

まさか??

「田中店長の代理でかけています。沢村です。」

沢村・・・

沢村拓海??

どうして、店長の携帯を拓海が持ってるの?

頭の中に「どうして?」がぐるぐる回ってパニックになっている。

「驚かせてすみません。あの、美鈴・・・さん?大丈夫ですか?」

拓海に美鈴さんと呼ばれて、更にパニックを増す。

心配のドキドキと、訳のわからない妙なドキドキでなかなか次の言葉が出てこなかった。

「だ、大丈夫です。けど、けど、どうしてあなたが店長の携帯から電話をかけてるんですか?」

「実は、今市立病院にいます。話せば長くなりそうなんですが、これから少し出れますか?」

拓海の声は淡々と、でも、とても大事なことを伝えようとしていた。