「あー!きくぅ~!」

コーラのCMさながらのオーバーリアクションで叫んだ。

店長は本棚を叩きながらそんな美鈴を見て笑った。


人を楽しませるのは得意だと思っている。

だけど人のために何か役に立ったことがあるかと問われたら、すぐには出てこなかった。

今までこうして楽に生きてきたツケかもしれない。

だから、せめて自分の進路だけはしっかり決めたいと思っていた。

誰かのために役に立つことをやりたい。

漠然とはしていたけど、それが美鈴のかすかな目標だった。

「あの彼、今日はえらく親しげに話しかけてきたじゃないか。」

店長はこちらを見ずに言った。

「こないだ大学の学食でばったり遭遇したの。私の親友とも顔見知りでびっくりしちゃった。」

「そうか、やっぱり同じ大学だったんだ。そりゃご縁だねぇ。」

店長の顔は見えない。

だけど絶対、ニヤニヤ笑ってると思う。

「あんな無愛想な男、ご縁なんてごめんだわ。」

「だけど、今日は笑ってたじゃないか。」

「笑ってたんじゃなくて、笑われてたの!」

「一緒だよ。」

「一緒じゃない。」

人を笑わせるのは好きだけど、真面目な話した後で笑われるのは心外だ。

美鈴は思い出して、眉間に皺を寄せた。