これまで誰かと会うたびに、胸の奥からわき出る衝動を抑えるほどに気持ちが揺さぶられた経験はなかった。

美鈴が初めてだった。

美鈴に触れたいと思うこともあったし、触れられた時は正直嫌だとは思わなかった。

それが恋だと気づいていたのは、薫から告白を受けた夜だった。

薫とは全然違う感情。

「それが恋なのよ。」

薫は涙で濡れた目で静かに言った。

恋はしないと決めていたのに。

急に怖くなった。

美鈴を傷つけるかもしれない。

自分もまた美鈴に傷つけられるかもしれない。

そして、やっぱりその日は来てしまった。

美鈴はどういう思いでこの封筒を受け取ったんだろう。

拓海にはわからなかった。

だた、自分に渡さなければならないっていう強い使命にかられていたような表情だった。

封筒をそっと手にとった。

中には三つ折りにした手紙が一枚入っている。

不安と戦いながら、その手紙をゆっくりと広げた。