美鈴はその週、学校を休んだ。

バイトも休んだ。

拓海と顔を合わせるのが怖かったから。

拓海からは一切電話もメールも来なかった。

もう終わりなんだ。

少しずつ終わったということを、美鈴は受け止め始めた。

ありがたいことに来週から夏休みに入る。

学校で顔を合わすことはない。

夏休みの間に、きっと忘れられる。

薫は時々美鈴の顔を見にやってきてくれた。

いつものシュークリームと、講義のノートを持って。

学校はそれでいいとして、このままバイトをずっと休むわけにはいかない。

お世話になった店長のために、仕事を中途半端に辞めるわけにはいかなかった。

そんなことを考えていたら、店長から電話があった。

心配そうな声で。

「美鈴ちゃん、最近体調悪いの?大丈夫かい?」

「はい、すみません。ずっと休んじゃって。」

「来週からは来れるかい?しんどかったら無理しなくていいよ。なんとか僕も一人でできるから。」

「一人でって?」

「いや、実はね、急だったんだけど拓海くんがバイト辞めてね。彼も今週は来てないんだ。」

「ェ・・・。」

思わず言葉に詰まった。

拓海、辞めたんだ。

よほど自分と会いたくないんだ。

そう思った途端、胸に鉛の杭が打ち込まれたような鈍い痛みが走る。

「来週は行きます。しばらく一人で大変でしたね、店長。すみません。」

電話ごしに美鈴は頭を下げた。