「色々思う事あるかもしれないけど、最後まで私の話聞いてくれる?」

拓海の表情が少し硬くなった。

「わかった。」

美鈴は静かに深呼吸をした。

そして、昨晩、拓海のお父さんに会ったこと。

拓海のお母さんが拓海をかばって手の平の怪我をしたこと。

誰よりも拓海を愛していたこと。

そして、お父さんもまた拓海のことを思っていることを一気に話した。

明らかに険しい顔になっている拓海の目をもう見ることができなかった。

そこへ、タイミングいいのか悪いのかランチが運ばれてきた。

呼吸をするのも忘れていた美鈴は、お水を飲んで、また深呼吸をした。

そして、バックから封筒を取り出して拓海の前に置いた。

「これ、お父さんから預かってきたの。お母さんのお姉さんからのお手紙。お父さん、ずっと大事にあなたに渡すためにしまってらしたわ。」

拓海はじっとその封筒を見つめていた。

そして、自分のズボンのポケットに無造作にしまった。

しばらく沈黙があった。

美鈴の心臓は信じられないくらいに早く鼓動を打っている。

「君は、」

拓海がようやく口を開いた。

「どうしてそんな余計なことしたの。」

ひどく冷たい声だった。

今まで拓海から聞いたことがないくらいに。

「そんなことして、僕が喜ぶとでも思った?」

美鈴はただ黙ってうつむいていた。

「人の過去にそんなに立ち入りたい?君は僕のなんなの?」

拓海は静かに、感情を消して言った。

「君は、僕の何者でもない。」

拓海はすっと立ち上がった。

「君を少しでも信じて話した僕が悪かったよ。」

そして、一人でファミレスから出て言った。

拓海の車のエンジンがかかる音がして、そして遠ざかる音を聞きながら、美鈴は一人でランチの前に座っていた。