いつもより険しい横顔の奏汰を見ながら、尋ねる。

「で、どこに向かってるんですか?」

「しばらくドライブだ。何も言わずに乗っておけ。俺も何も言わない。」

「何それ。」

奏汰は高速に乗った。

「え?そんな遠くに行くんですか?ちょっと待って。」

奏汰は聞こえてないふりをしてただひたすら車を走らせる。

高速を30分ほど乗って降りた。

隣の県まで行っちゃってるし。

美鈴は訳がわからなくて頭を抱えた。

そして、住宅街を走る。

ここはどこ?私は誰?の世界だった。

そして、住宅街の真ん中で、奏汰は車を停めた。

「降りろ。」

「へ?」

「俺はちょっと用事で今から行ってくるから、そうだな。今から一時間後、またここで会おう。」

そのまま、住宅街のど真ん中で美鈴は車から降ろされた。

そして、無残にも一人取り残されてしまった。

なんなの!!

心の中で叫んでみるも、あまりにも訳がわからず、怒る気力もなかった。

でも、ここはどこだろう。

辺りをキョロキョロ見渡した。

来たことのない町。

電柱に住所があった。

「N市・・・?」

ふと拓海のお父さんの住んでいる町の話が蘇る。

まさか、まさかよね?

奏汰、調べて連れてきてくれたの?

でも、個人情報だから直接教えられないから、こんな風にして?

降ろされた場所は、一軒家の前だった。

表札を見ると、『沢村』と書かれてあった。

拓海の実家。

本当に来ちゃったんだ。

急に暗がりで一人ぼっちの不安が襲いかかった。

何の準備もせず、拓海のお父さんと会うなんて、そんな無謀なことできる?

でも、今このチャンスを逃したら、一生来れないかもしれない場所だった。