しっかり食べて、ひとしきり二人で泣いた後、薫が言った。

「ごめんね。美鈴。嫌なこと言って、本当にごめん。」

「どうして?私の方こそごめんなさいなんだよ。」

「昨日、美鈴から拓海と食事に行くって話聞いて、本当につらかった。だから、あんな嫌な言い方した。」

美鈴は紅茶を飲みながら、頷いた。

もし、自分が薫の立場だったらどうだろう?

絶対、同じようなこと言ったと思う。

美鈴はそう言った。

「だけど、あの時から美鈴が私のそばから離れて、今日も学校に来なくて、本当に寂しかった。拓海のこと以上に辛かったの。」

「私もだよ。ずっと薫のこと気になってた。」

「もうあんなひどいこと言わない。これからもずっと親友でいてくれる?」

まさか、薫からそんな風に言われるなんて思わなくて、美鈴は少し驚いた。

薫にはいつも周りに友達がたくさんいて、楽しげで、美鈴が一人いなくなったところで寂しくないだろうって思ってたから。

それにひきかえ、田舎から出てきた美鈴は、友達という友達が未だにできなくて、唯一そばにいてくれる薫だけが頼りだったから。

「ねぇ薫。ブランコに乗りに行かない?」

「ブランコ?」

薫は紅茶カップを下に降ろして、驚いた顔で美鈴を見た。

「うん、すぐ近くに公園があるの。今日窓から見たら、ブランコに乗ってる子供達がすごく楽しそうで。ちょっとあの頃の自分が懐かしくなったんだ。」

「いいよ、ブランコ乗りに行こう。」

薫はそう言うと、目をキラキラさせて立ち上がった。

そして、自分の髪の束を一旦外して、きちんとくくり直した。

外はもう夕暮れ時で、子供達もまばらだった。

ブランコはさっきまで誰か乗っていたのか、ゆらゆらと揺れていた。

薫と二人並んでブランコに乗る。

「気持ちいいね。何年ぶりだろ、ブランコなんかに乗ったの。」

薫は笑いながら童心に返ったかのようにブランコを漕いでいる。

美鈴も負けじと漕いだ。

ブランコってこんなにも地面すれすれで揺れるものだったっけ?

幼い頃と違うヒヤヒヤ感が、逆に楽しかった。